10年ほど前、こだわりの家具をご注文いただいた神奈川県のお客様より、この度、並々ならぬ想いが込められたお仏壇と仏壇台のご依頼を頂きました。繊細な格子から漏れる灯りが幻想的な曲面無双連子戸仏壇です。おそらく世界で初めてのお仏壇だろうと思います。
お客様が描かれた構想は、職人の挑戦心を強くかき立てるものでした。「合板を一切使わずすべて無垢材で仕上げること」「仏壇らしさを排した佇まい」「金具を極力使わない構造」、そして何より難題だったのが「繊細な格子を用いた、曲面の無双戸(むそうど)」という意匠です。
曲面の無双戸を「開き戸」で仕立てるという試みは、製作可能かどうかの見極めから始まる大きな挑戦でした。まずは原寸大のサンプルを製作して検証を重ねましたが、曲面ゆえに内格子戸のはめ込みは伝統的な「ケンドン式」では不可能です。試行錯誤の末、ふと脳裏をかすめた「マグネット仕様」という新発想により、ようやく解決の糸口を掴むことができました。
また、厚さわずか6mmという格子の「反り」への対策にも、自然素材を扱う職人の意地を注ぎ込みました。板材から小割にした格子は、内部応力の変化によって時間をかけてゆっくりと曲がってきます。これを見越して、格子を一本一本紐で吊るして3ヶ月もの養生期間を設け、木が落ち着いたところで改めて削り直す。この妥協のない工程を経て、狂いのない美しい格子が完成しました。
本体のサイズ決定に「白銀比」を取り入れるなど、デザインの主軸はお客様が担われました。技術的なハードルが高ければ高いほど、作り手としての作る喜びも深まるものです。納品後、お客様からは「思った以上の出来栄え。これほど大変で、楽しめた作業はなかった」という、何よりの賛辞を頂戴いたしました。
お客様と私共の情熱が共鳴し、素晴らしい「共作」となったこのお仏壇。職人冥利に尽きる、大変実り多き製作機会をいただいたことに深く感謝しております。
お客様からこれまでに、[No,1101コレクションボード] を御注文頂きました。
