木の仕事・技術

動きを知る。

熊本はやっと昨日(4日)例年より19日遅く梅雨明けしました。自然現象とはいえ、無垢板を加工する者にとっては全く厄介な梅雨なんです。この時期、木は空気中の水分をしっかり吸い込んで膨れています。梅雨明けしたらといってすぐ吐き出す事は無くて、ゆっくりゆっくり吐き出して縮んでいきます。どれ位のスピードでどれ位の量が動くのか、感では中々つかめません。過去には、もう十分吐き出し乾燥しているだろうと思って細工をして失敗した事もありますし、逆に梅雨時期に引き出しのカキ板が膨らみ動かなくなった事もあります。木の「動き」は一年中毎日毎日気遣いしなくてはいけない重要な事項です。
勿論文献ではその係数とかは解っていますが、実際の当工房の環境ではどうなのかが知りたくて昨年梅雨時期にサンプルを作って約1年間計測しました。
サンプルは完全乾燥した長さ1メートルジャストの6枚接ぎのタモ材です。それに1メートルのスケールを添えて目盛りでその伸縮量を測ります。併せて含水率も測りその相関関係を検証してみました。
↓↓ サンプル材
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  ↓↓ 含水率計
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未だ途中ですが結果報告です。
昨年6月の梅雨明けのスタート時点で0ミリ。じわりじわり縮んで10月頃は-2ミリ~-4ミリ、今年春先頃から一気に縮み、今年5月が最高で-7.5ミリ。今年の梅雨に入り、逆にぐんぐん伸びて7月中旬に+2ミリ。結果は巾1メートルのタモの木が約9.5ミリ伸び縮みする事となります。但し、樹種の違い、板目なのか柾目なのか、木目の密度の具合、乾燥年数や人工乾燥の技術的優劣、その他色々なファクターが絡んでいますので、全ての木に共通するとは限りません。でもその時点における工房内の材木の含水状態の一応の目安にはなります。今後もっと多くのデーターを蓄積し結果として完成度を高めた作品に反映させれたらと思います。